針刺し切創、血液・体液曝露は、血液媒介病原体への感染リスクの機会があるものと認識し、施設の安全衛生管理体制、感染管理体制での位置づけを明確にして取り組む必要があります。また、計画(P)実施(D)評価(C)改善(A)のPDCAサイクルが回るように体制を整える必要があります。
なお、留意点を以下のとおり整理しました。
1.病院などの管理・運営にあたる方に
全般的事項
- 血液媒介病原体への感染リスクや病院事業に与えるリスクについて理解し、スタッフに周知します。
- 針刺し切創防止のための組織と役割を明確にします。
- 病院内で発生する鋭利器材による災害や職業感染リスクを評価し、対策を検討します。
- 注射器の安全な取り扱いルールを決め、スタッフに徹底します。
- 針刺し切創の危険性について、危険表示やポスター等の利用によって注意を喚起します。
- スタッフを含めた話し合いの場を設け、現場の意見を積極的に取り入れます。
- 針刺し切創が起こった場合の報告体制(院内サーベイランスシステム)や事後措置体制を院内で確立し、全スタッフに周知します。
- 針刺し切創に関する教育を定期的に実施します。
機器整備
- 注射器や採血後に、簡単な操作で針先をカバーできる安全注射器等の利用を進めます。
- 注射器・鋭利器材の使用後、すぐに捨てられる廃棄容器を十分な数、提供します。
- 採血や処置を行いやすい作業環境を整備します。
- 注射や採血、点滴等に適用した明るさが、必要なときいつでも確保できるようにタスクライトを設置します。
- 注射や採血、点滴等の作業が安全に行われるために、ゆとりあるスペースを確保できるようにします。
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安全器材の導入の際には、職場で発生している災害の特徴を踏まえて、器材の選択、事前評価、決定、導入前評価、導入後評価などを行います。(参考:安全器材カタログ集)
情報提供
- すべての血液・体液は感染性のあるものとして、スタッフに伝え、注意を喚起します。
- 針刺し切創の予防に役立つ注射器や関連機器に関する最新の情報を入手し、医師、看護師、臨床検査技術師等の関係者に迅速に伝えます。
教育・研修
- 針刺し切創防止トレーニングのカリキュラムを作成するとともに、このカリキュラムに沿ったトレーニングを実施します。
- 針刺し切創防止トレーニングはまず、新人教育の一環として行われることが望まれますが、同時に中途採用者、非常勤職員などへのトレーニング、また、キャリアに応じた再トレーニングに応用します。
- 針刺し切創防止トレーニングは、実技を中心とした実践的なトレーニングに心掛けます。
- 購入可能な安全器材等の使用説明書・注意点などは、添付文書に記載されていることがあります。それぞれの安全製品の情報について、添付文書を確認する、メーカーの方に問い合わせるなどとして、正しい使用方法、トレーニングの方法を入手することが大切です。これらの情報は、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構のこちらのサイトでも入手できます。
業務改善
- 針やメスなどの鋭利器材を使用する医療行為について、針刺し切創の危険性が増していないか点検し、必要があれば改善を図ります。
- 深夜勤の早朝帯に採血業務等による注射針の使用が集中しないように、必要があれば業務の見直しを行います。
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血液・体液に曝露する可能性のある作業では、個人用防護具が必要かどうかなど、適切な業務の進め方を検討します。
「病院等における災害防止対策 研修ハンドブック 針刺し切創防止版」(発行 地方公務員災害補償基金、平成22年2月) からその一部を、許可を得て改変、転載。