KN95等の不良品マスクを見分ける方法について
(2020年5月26日公開、2020年6月2日更新)
職業感染制御研究会では、4月下旬にKN95等の中国製品に不良品が多数あることの注意喚起をしてきました。
KN95を中心とした中国製品の性能評価をNIOSHが報告(2020年4月28日)
しかし、依然としてN95相当の感染対策用の微粒子用マスクで性能が不確かなものが国内に流通しています。業者からの売り込みもあるようです。
業者の方には、「米国のFDAのEUA(Emergency Use Authorizations (EUAs))を受けた製品ですか?米国のEUAを添付してください」と聞いてみることは、確かな製品を購入する際のシンプルで確実な自衛手段です。
自治体から配布されたり、厚意で寄付されたりしたKN95とN95相当のマスクもあるかと思います。実際にそれをN95相当として利用するかどうかは、以下の判断ポイントを参考ください。
なお、令和2年5月28日付けの厚労省通知(以下)で、本件が通知されていますので、合わせてご参考ください。
N95相当の微粒子用マスクとして感染対策に利用可能なものかどうかを判断する5つの方法
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日本の国家検定を受けたN95規格相当の防じんマスク(N95マスク相当)かどうか
- 国内各製造企業の型番を確認する。防じんマスクのリストにあれば、問題ない。
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スリーエム、
○
興研、
○
シゲマツ)など
<ポイント>日本の使い捨て式防じんマスク(DS2規格以上)であるか確認し、それぞれの製造企業の国家検定合格品のリストにあれば性能は問題ない(ただし、液体防護性等が評価されていない製品もあるので、表面の汚染には注意)。
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米国の防じんマスク国家検定N95規格の認証を受けた防じんマスク(N95マスク)かどうか
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COVID-19対応で利用されたN95規格相当の防じんマスク評価を受けたか否か
NPPTL Respirator Assessments to Support the COVID-19 Response
- 上記のリンクからウェブに入り、「Manufacturer(製造企業)」「Model Number/Product Line(型番/製品ライン番号)」などを確認し、購入予定(入手・購入した)の製品名であるか確認する。
- 当該製品の「Test Report」を確認し、現物の写真と一致しているか確認する。
- 「Filtration Efficiency (%)」が95%以上の製品であればフィルター性能は問題ない。
<ポイント>米国国立労働安全衛生総合研究所(NIOSH)の国立個人用保護具技術研究所(NPPTL)が、N95規格の防じんマスクとしては認証していない製品であるが、今回のCOVID-19対応として緊急輸入などされたN95規格相当の製品を評価している。この評価結果が適切であれば、性能は問題ない。
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米国のFDA(米国食品医薬品局)によるEUA認証を受けた製造者と製品のリストにあるか否か
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定量フィットテスト機器を用いて自施設のN95/DS2レスピレーターの漏れ率を評価する
- 下記で紹介している「労研式マスクフィッティングテスターMT-05U型」「ポータカウントプロ・プラスIP」等の定量フィットテスト機器を用いて、入手・購入予定(した)のKN95マスクなどを実際に装着し、漏れ率の評価を行う。
<ポイント>
上記(1)-(4)のリストで対応するだけでなく、実際に漏れ率を測定することは、着用するN95/DS2レスピレーター(N95/DS2マスク)の効果があるかどうか確認する手段となります。フィットテストの手順に従って漏れ率を評価する、またはユーザーシールチェックのように簡易的手法で漏れ率を評価してみます。着用者が視覚的に理解し安心でき、また着用者にとって最も効果的なN95/DS2レスピレーターを選択し、装着方法を学ぶ意味でも有用です。定量機器メーカーから購入あるいはレンタルしたり、防じんマスクメーカーの協力などを得るとよいでしょう。
なお、これらの定量フィットテスト機器を用いてのCOVID-19への交差感染の可能性も指摘されています。COVID-19患者の対応、COVID-19感染疑いのある医療従事者が利用することなど、複数人で利用する際は、その使用手順を改めて確認ください。
参考:
TSI社「ポータカウントマスクフィットテスターを用いてフィットテストを実施している被験者は、前の被験者の呼気湿気に暴露する事はあるのか?」
なお、実際に測定した結果等について有用な知見がえられた施設があれば、ぜひ情報を職業感染制御研究会までお寄せください。
国内におけるN95規格等のマスクの性能評価結果
以下の公開情報があります。こちらもあわせて参照ください。
(1)日本医師会総合政策研究機構による評価
新型コロナウイルス感染症関連で、輸入されているN95規格マスクのフィルターの性能評価結果を公表しています。主に折りたたみ型のN95マスクを評価しています。
輸入されているN95のフィルター測定評価について第一報(2020.5.12)
輸入されているN95のフィルター測定評価について第一報(2020.5.20)
フィットテストの実施、ユーザーシールチェックの励行について
フィットテストは、どのN95マスクであれば自分にきちんとフィットするかを確認し、正しい装着方法を習得するためのものです。米国においては、N95マスクの導入時、その後は年に1回、それ以外でも体重の増減などで顔貌が変わったときや、着用者からの要望があったときにはフィットテストを行うことが義務付けられています。日本では一部の粉じん職場でフィットテストの実施が義務つけられていますが、感染対策として医療職場での実施義務はありません。しかし、空気感染防止、エアロゾル感染防止のためにN95マスクを着用する医療従事者が、フィットテストなしでN95マスクを着用していることは、マスクの性能評価以前の問題といえます。自分にあったN95マスクを選び、使用する度にユーザーシールチェックを行ってください。
フィットテスト、ユーザーシールチェックについては以下を参考ください。
N95 マスクの適切な装着のための2つのCheck
○定性フィットテストキット
※
- 3M フィットテストキット FT-10
※フィットテストについて詳しく知りたい方は、以下のビデオを参照ください。英語ですが、準備から実施、片付けまでよくわかります。
○定量フィットテスト機器
- 労研式マスクフィッティングテスターMT-05U型
- N95マスク定量フィットテスター:ポータカウントプロ・プラスIP
- マスクフィットテスター AccuFIT 9000 Model 3000-00
- マスク内圧・フィッティングテスター(MNFT)
参考:
フィットテストインストラクター養成講座テキスト(フィットテスト研究会)
補記:KN95等の感染対策用の微粒子マスクの売り込みに際しては、KN95やCEのテストレポートが添付・示されるようですが、その情報を読み込むのは至難の業です。偽造されている可能性もあります。国内では、全てエンドユーザーの判断に委ねられていますので、FDAのEUAを受けた製品ですか?EUAを示してください、という問いを売り込み業者に確認することは一つのはシンプルな自衛策です。
なお、上記の評価は主にN95マスクのフィルターの性能であって、N95マスクの顔面へのフィット性を評価しているものでないことに注意しておくことが必要です。例えば耳掛け式のN95マスクは、頭部の後ろにしめひもを固定する構造のN95マスクよりフィット性が落ちることがあります。N95/DS2マスク利用者は、それぞれのN95/DS2マスクについて各自フィットテストを行って自分にとって漏れ率が少ない製品であるか確認することと、毎回使用前に必ずユーザーシールチェック(フィットチェック)を行うことが必要です。
フィットテストについては以下をご参考ください。
https://www.safety.jrgoicp.org/ppe-3-usage-n95mask.html
※本情報の一部は、スリーエムジャパンの安全衛生製品事業部学術部の國谷様より提供いただいています。感謝申し上げます。
本内容について質問や疑義、コメント等がある方は、遠慮無く研究会のトップページにある研究会事務局の連絡先からメールにでご連絡ください。皆様のご意見を反映して、よりよいページ作りを進めるようにします。
2020年5月26日
一般社団法人職業感染制御研究会
COVID-19 に対応する医療従事者の個人防護具確保のためのワーキンググループ
文責 吉川徹(職業感染制御研究会)