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「雇入時の健康診断」は、常時使用する労働者を雇入れた際における適性配置、入職後の健康管理に役立てるために実施するものであって、採用選考時に実施することを義務づけたものではなく、また、応募者の採否を決定するために実施するものでもありません。
「ウイルス肝炎感染対策ガイドライン(医療機関内)」においても、「新規職員は、採用後できるだけすみやかに検診を行う」とされており、採用選考時に健康診断結果を提出してもらうことが推奨されている訳ではありません。本人のプライバシー侵害に該当して違法となるケースもあるのでご注意下さい。
ただし、過去の裁判例においては、「雇入時の健康診断」は、使用者に広く採用の自由を認めており、その一環として労務提供に必要とされる範囲で、応募者に健康診断結果を提出してもらうことは直ちに違法となるものではありません。医療機関において肝炎ウイルスを事前に検査することは必要とされる範囲内となる可能性が高いと思われます。(B金融公庫(B型肝炎ウイルス感染検査)事件 東京地判平15.6.20)(平成23年7月28日基発0728第2号「職域におけるウイルス性肝炎対策に関する協力の要請について」)
結論として、採用選考時に肝炎ウイルスの結果を提出してもらうこと自体は医療機関において違法行為に問われる可能性は低いとは思いますが、実施するに当たり、採否に使用しないなどの正しい知識の普及、事前に本人の同意を得るなどの対応を十分に講じておく必要があります。
根拠となる法令、ガイドライン、判例
「ウイルス肝炎感染対策ガイドライン(医療機関内) 」1995年 ウイルス肝炎研究財団
【職員のB型肝炎定期検診の実施】
新規職員は,採用後できるだけすみやかに検診を行う。なお,HBs抗原およびHCV抗体の検査結果を採用の条件としてはならない。
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(参照)
厚生労働省リーフレット「事業者の皆さまへのお知らせ」
【採用選考時の健康診断について】
採用選考時において、肝炎ウィルス検査(血液検査)を含む合理的必要性のない「健康診断」を実施することは、結果として就職差別につながるおそれがあります。したがって、採用選考時における「健康診断」は、その必要性を慎重に検討し、それが応募者の適性と能力を判断する上で合理的かつ客観的に必要である場合を除いて実施しないようお願いします。真に必要な場合であっても、応募者に対して検査内容とその必要性について、あらかじめ十分な説明を行ったうえで実施することが求められます。
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(参照)